Akiapola'au

読んだ本のメモ ネタバレは自衛してください

2024/3

こんげつは仕事が忙しくて(年度末だしね)あんまりフィクションにまじめになれなかった。感想もあんまり書く時間なかったよ。

3/4

Sphere『ヨスガノソラ』

インターネットミームにもなったあの作品に表敬訪問――というわけでもなく、妹もののおすすめをネットで探すとだいたいみんな挙げてるのでやってみました。
冒頭の CG から雰囲気が良すぎる! でも解像度が 800 * 600 でマジ? というかんじ*1。そうか……この時代はまだ 4:3 なのか……。それはさておき列車のなかの CG がめちゃくちゃいい。夏で、田舎で、逃げてきたんだなというのが一目でわかる。
奥木染に着いてからはややかったるい学園ものの日常がたらたら展開されてとくに亮平が出てきてからはだいぶ苦痛が……。亮平がセクハラを働く → 一葉か穹か奈緒がシバきを入れるという流れでテキストがかなり水増しされているのがな。とはいえ共通はそんなに長くなくて、とくに事件も起こらない。各ヒロインが顔見せして個別で使う伏線をちょっと張って終わりというかんじだ。ていうかなんかけっこうヒロイン多くてワロタ(5 人)。3 人くらいだと思ってたよ。

初佳
メイドと巫女ってなんであんなに猛威を振るったんだろうな。初佳はもうこれ義務で入れただろみたいなメイドキャラで、年上ポンコツ社会人という味付け。書いてる側もなにが魅力なのかわかってなさそうで、じっさいどこがかわいいのかよくわからないまま話が進む。これが恋愛アドベンチャーゲームでなければ、たしかに隙があって出会いを求めてそうな女性はややモテそうだが、それってあんまりよくない呼ばれ方をするモテ方なきがする。
悠くんと付き合い始めたらなんか昔の男から連絡きて気持ちがなびいちゃったからもう付き合えないのってフラれてなんやかやあってヨリを戻すみたいなどうしてこうなったというシナリオで、世が世ならディスク割られてるぞ。でもモトカって名前がそもそも元カレありきのネーミングなのか……(?)
亮平に見せ場があったのはよいとして、過去回想パートはちょっとわかりづらすぎる。

一葉
瑛が一葉の異母姉であったことが判明する。妾腹の子だ。みずからは代議士の娘として不自由のない暮らしをしているのに、瑛は一葉の母の仕打ちで不遇な環境に置かれているという負い目もあって、一葉は瑛のことを常々気にかけていたが、悠と付き合い始めたのでそれをおろそかにしてしまい、そのことへの罪悪感で別れを切り出す。また別れを切り出すパターンかい!
そんなに悪いルートというわけでもないけど初佳からの流れでやるとパターンがおなじだし主人公おいてけぼりなかんじもして全体にふーんで終わってしまった。


メイドと巫女ってなんであんなに猛威を振るったんだろうな。瑛は巫女のほう。
天真爛漫なようでいてどこか達観していて、……みたいなニュアンスのあるキャラづくりがなかなかよいような気もしたが、じつは産院でチェンジリングがあったかもしれない――瑛と一葉の立場は逆だったかもしれない――という話がはじまってからはかえって達観が足を引っ張ってしまったような。このまま墓まで秘密を抱えていく瑛の覚悟はいいとして、だからこそ無理に(たとえば取り替えが発覚したら一葉はどうなる?)真実を追求しようとする悠のモチベーションがちょっと強引におもえるんだよな。というのはシナリオ側でも自覚があるらしく、やひろさんのセリフを(二回も!)回想させて勝手に事情に踏み込むことの身勝手さが強調されている。
まぁでも DNA 鑑定してからの流れ――穹が話をかき乱したり――はけっこうおもしろい。母親とも和解してすっきりだし。あとあはーって笑い方はいいよね。あはぁ。

奈緒
お前過去にこんなやらかししといてよく亮平のこと批難できるな……というかんじで、共通の時点からあんまりやりたくねーと思ってたルート。
罪をどう償っていくかみたいな話はまじめにやっていると思うんだけどそれはそうとして男女逆だったらこうはなってませんよね……となってしまう。そんなこといってもしょーがないのだが……。バスのシーンとかからも明らかなように穹の苦しみとかがむしろフォーカスされてしまっていて、うーん、穹ルートの前哨としてしか捉えられない。


ここまでのルートがどれもひどいというほどではないけど褒めるようなかんじでもなかったのでまぁ太古のゲームだしこんなもんかと思っていたけど穹のルートだけ完成度がやっぱり一段階も二段階も違った。さすが穹ゲーとか穹だけゲーとか十五年戦えるヒロイン*2を生み出したとかいわれてるだけある。
おおきな流れは両親を事故で失い、喪失感から共依存に陥りかけた双子が、その関係を周囲の人間に知られることで、ふたりだけでは幸せになれないという壁に直面し……というもの。ましフォニの桜乃ルートをやったあといろいろネットで感想を漁ってたら「タブーが云々みたいな話は飽きた」みたいな感想をよくみて、まぁたしかによくあったんだろうけどあたしは実物見たことないな……と思っていたので実物を見られてよかった。なるほど、こういう話が流行ったのを受けて妹は出てくるけどタブーとかそういうめんどくさい話はやらない、みたいなのがメタゲームになったんですね。
まじめな感想はこっちで書いたのでまじめじゃない話をすると、穹のいうねっとりした「ハル」のアクセント――ハァ↑ル↓~↑?がかわいい。でも ASMR のほうはハルの名前が出てこないからその点でちょっとがっかり……。

3/5

小川一水『天冥の標Ⅱ 救世群』(ハヤカワ文庫 JA)

プラクティスとリエゾンドクターの成り立ち。タチの悪すぎる感染症のディテールはすごい凝ってるのに最後いきなり千茅が女王になるところで神話になってしまうのがややウケだ。

3/6

エルヴェ・ル・テリエ『異常』(早川書房)

SCP 報告書みたいな……かんじやね。
数か月の時間差をおいてドッペルゲンガーが発生したとして、その数か月の間に人生に転機が訪れていたらどうなる?という if はシンプルかつ目新しい設定だし、じっさい上手く書けていたと思うのだが、中盤のモキュメンタリーなんだか質の悪いスラップスティックコメディなんだかよくわからない異常事態への対処やってるあたりはほんとに退屈だった。『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変』を読んだときのダルさを思い出した。あとこの異常がなんでシミュレーション仮説を強く含意するのかがまったくわからなくて困惑した。総じて SF としてはぜんぜん面白くなく、ドッペルゲンガーが出てくる理屈なんてファンタジーで処理しちゃって純文学をもっと真正面からやればいいのによと思ってしまったが、こざかしい SF っぽい味付けをしてるからみんな面白がってるんだろうな。タハハ。しかしな~令和にもなって大真面目にフェッセンデンの宇宙をやられてもな。やっぱ SF 要素いらないよ。

3/7

マルセル・プルースト『失われた時を求めて 3 花咲く乙女たちのかげにⅠ』(岩波文庫)

眠すぎてガチで前半の中身覚えてへん笑。「私」はたぶん作中で 14, 5 歳? くらいのはずなのだがそれにしてはジルベルトとのやりとりが幼すぎるし、にしては娼館に行ったりしてるしで、記憶が混濁してないか? こいつ……というきぶんに……。

3/9

Sphere『ハルカナソラ』


いや委員長視点で悠くんを攻略する話なんかい!
なのにシーン中は悠に視点が戻っていやなんでだよと思った。
デートになぜかついてくる穹と勝手についてきて勝手に脳破壊されてる穹がかわいいという話やね。

やひろ
興味なさすぎて Ctrl 押してたら終わった。


本編のラストと唐突なフィンランドオチのあいだにあった空白を埋めるサイドストーリー。学校のみんなに受け入れてもらうために挨拶周りみたいなことをしていてうーんかったるそうですなぁと思った。

3/14

マルセル・プルースト『失われた時を求めて 4 花咲く乙女たちのかげにⅡ』(岩波文庫)

とにかく「私」の性格が不愉快すぎて笑っちゃうよね。おれたちはラブコメ生まれラブコメ育ちだぞ。読者をもっと甘やかせ。少女たちについてはぜったいにキャラ萌えさせないぞというプルースト先生の硬い意志をかんじるのにサン=ルーとかにはキャラ萌えの付け入る余地を残してるのがややおもしろいところ。まぁでもなんかそもそもあたしはよくしらん人と仲良くなりたいみたいな気持ちそのものがよくわからない*3ので全体的によくわからん巻ではあった。でもいちばん人気らしい。

3/14

夏目漱石『行人』(ちくま文庫)

十年以上ぶりに再読。案の定ぜんぜん覚えていなかったが思わせぶりと DLsite の中間くらいを行く嫂の態度をみてたらなんかいろいろよみがえってきた。
漱石の伝記的な事実とかはほとんど知らないんだけど、調べてみると漱石自身も嫂となんやらあったかもしれないみたいなことがいわれているんだそうだ。漱石が二十歳くらいのころ、夏目家の長男と次男が相次いで亡くなったので、漱石は養子先の塩原家から籍を抜いて夏目家に復籍する。住まいも下宿から実家に移してそこから旧制一高に通った。
実家といっても、漱石は一歳で養子に出されているのでかれの生まれ育った家ではない。どこかよそものとして居心地の悪さを覚えるなか、家督を継いだ兄(三男)の直矩が、結婚三か月で離縁した妻*4の後釜として後妻の登世を迎える。漱石と登世は同い年(漱石のほうが二か月早く生まれている)で、夏目家の家族ではあるが同時によそもので、江藤淳などはこのふたりのあいだに姦通の事実のあったものとして想定している。
江藤説はまぁそりゃそういう目でみりゃなにもかもがそう見えるでしょうなぁという無理筋な解釈で、あまりあてにならないが、とはいっても漱石が登世に恋をしていただろうというのはほとんど確実だといえる。なぜかといえば、毎日学校に行くときに海苔巻きで弁当を作ってくれる二か月年下のお義姉ちゃんに二十歳そこそこの男が恋をしないのは不可能だと考えられるからである。証明完了。さて登世は妊娠悪阻をこじらせるが、病状が悪化するさなかにも兄はそれを顧みることなく夜遊びを続け、かえって漱石のほうが登世を背負って階段昇降を幇助するなど、なんくれとなく世話を焼いてやっていたようだ。しかしその甲斐もなく登世は 24 歳にしてこの世を去る。漱石はこれを大変悲しんで「君逝きて浮世に花はなかりけり」と詠んでいるし、子規にあてた手紙では「一片の精魂もし宇宙に存するものならば、二世と契りし夫の傍らか、平生親しみ暮せし義弟の影に髣髴たらんか」などと書いている。
うーん、おれが漱石でも嫂に恋すると思う。

それから』に出てくる嫂はどちらかというと雑談の相手をしてくれたり、縁談の世話を焼いてくれたり、お金を貸してくれたり(重要)、ママみのあるかんじだったが、『行人』の嫂はそれにくらべると各段にエッチだ。もちろんお兄ちゃんのネトラセ依頼に応じてデートに行ったら台風がきて泊りになっちゃうところのくだりはかんぜんに恋愛頭脳戦というかんじで激熱なのだが、それよりもっと微妙な風合いのやりとりでも漱石はとってもエッチだ。東京に帰ってきてお兄ちゃんと折り合いが悪くなった二郎はやがて下宿するようになるが、あるとき実家にふらっと帰ると居間には嫂しかいなかった。その時のやり取りがこうだ。

「御父さんは?」
「御父さんは御留守よ。今日は築地で何かあるんですって」
「精養軒?」
「じゃないでしょう。多分ほかの御茶屋だと思うんだけれども」
「お母さんは?」
「お母さんは今御風呂」
「お重は?」
「お重さんも……」
 嫂はとうとう笑いかけた。
「風呂ですか」
「いいえ、いないの」

おれはこの文を読んだとき耳元で嫂の「いいえ、いないの」の声色が聞こえてきたね。じつにねっとりしてた。
三四郎』にも『こころ』にも思いがけず女とふたりきりになってしまったとき(もちろん思いがけずなんてことはなく、うっすらそれを無意識に願っていつつ主人公はすっとぼけて思いがけずみたいな態度を取っているだけなのだが)の描写があるが、そういうときに発生するいやこれ奥の意図に気付かれているかもしれんな、しかしこの女それを嫌がっているわけでもないかもしれんな……みたいな磁場を書くのが漱石はダントツに上手い。漱石が国民作家になったのは性を直接書かなかったから(お茶の間で漱石ならまぁ女子供にも読ませてよかろうとなったというだけのことだが)といわれているが、こんなもの直接書くよりよっぽど卑猥だ。いやらしい。
あと『行人』はめっちゃかわいい妹が出てくるから大加点だ。でもさいごはずっとなんかよくしらんおっさんが頭イカれちゃったお兄ちゃんのことを手紙で報告してくるだけになるしそのまま終わるしでさすがにこれは当時の読者もキレただろう。

3/16

CUBE『海と雪のシアンブルー』

どうせ半年後には卒業して上京しちゃうのになんかこの期に及んでひととの出会いがあって……という設定がちょっと目新しいゲーム。世の中高校二年生の主人公多すぎ問題に対する回答のひとつだわね。
いまさら出来た義理の妹、いまさら口を利くようにいなった同級生、まえから友だちだったけど深いことは全然知らなかった後輩のいまさら知る事情、いまさらその存在を知った不登校の同級生、いまさら個人として認識するようになった先生、というわけで、いまさらにもバリエーションというかニュアンスがあってよいかんじ。まぁおれは妹モクで買っただけだからあんま小難しいこととかわからないのだが……。

共通
共通ルートがいちばん雰囲気ゲーしててよかったんではないか。共通といっても前半は実質義妹の七ルートで、「志音さん」呼び&丁寧語から「お兄ちゃん」&ため口になるまでをやってくれる。

衣良
学生が先生と恋愛する話ってだいたい先生が酔っ払ってるとこみてあっこのひとも人間だったんだ……(トゥンク)となるパターンだが、なんかこういうトロープそのものにあたしはあんまり惹かれないな……。酔ってるひとがとにかく嫌いなため……。
さておき衣良先生は教師ばっかの家系に生まれたせいでじぶんはあんま教師向いてへんのとちゃうかみたいなコンプレックスを抱えていたわけだが、とくに描写されることなくさらっとコンプレックスを解消してしまった。生徒と教師の距離感も卒アルにコメント書くためにみんなと話すようになってハッピーみたいな感じでとくに仕掛けはない。
なんかまったく盛り上がらないルートで、先生がとにかくしら~っとしてるのでエッチも基本主人公からがっついていくことになるが、共通でお前そんな性格じゃなかっただろ。

琴羽
令和にもなって昔会ったあの子と再会するも主人公は忘れてて……ネタをやるなよ。試験時間に間に合わないとか卒業アルバムの印刷が失敗しちゃったとかアドホックな事件が後半に集中してなにがやりたいルートなのかよくわからないまま終わってしまった。どうせすぐに離れ離れになっちゃうんだから期間限定で恋人のお試しをしようとか言い出した前半はよかったんだけどね。
CG はいちばんえっちだったというか精液の量が多すぎるだろ。髪型もツインテじゃない方が百倍かわいいね……。

いなば
デッデッデッデミアン~~!??!??! このキャラデザでデミアン読むなよ(人種差別)。おれたちが文学少女とみればそれだけで好きになると知っての狼藉か? でも後半でいなばの書いたネット小説が編集者の目に留まってデビューしたりしてたので敵認定しました。
親との確執みたいなのをやるのか~なかなかこのゲームにしては重いなと思ったらヌルっ……と回避されてしまい、困惑……。


不登校の不思議ちゃんがずっといっしょにいたいとか思わせぶりなことを言ってきて思わせぶりだな~と思ったらほんとに素でプロポーズのつもりで言ってたところがいちばん萌え。でもどんどん健常者になっていくからな……。夢ちゃんも共通のときがいちばんかわいかった。CV がいいと思いました。


オタクくん(あたしのことです)がよくいってる他人から家族に、家族から恋人に……というのをねっちりやってくれたのでそれだけで満足です。前者に比べて後者は淡々としてはいたけど……。力を入れるとこ逆だろ!
にしても展覧会に出展した絵、画面に対してお兄ちゃんが占める割合が大きすぎる。これ海の絵じゃなくてお兄ちゃんの絵じゃん。こんなのが賞取れるわけないだろ!

3/17

あざらしそふと +1『アイコトバ -Silver Snow Sister-』

ミドルプライスのピンヒロインものってようするに抜きゲーみたいなかんじでしょ、H シーン 12 個とかいってるし……とおもったらラブコメとスポ魂の合わせ技でかなり面白かった。
銀音ちゃんがとにかくかわいいんですよね。丁寧語だし。オタクくん丁寧語ヒロイン好きやね……。ツインテール眼鏡になった立ち絵の銀音ちゃんがかわいすぎる。でも眼鏡ありの H シーンは一個だけでキレそうです。SD イラストもめちゃかわいい。

銀音(しろね)のツインテール眼鏡立ち絵。
かわいい~。仙台市地下鉄東西線だ~!
お兄ちゃんがとつぜん彼女欲しいとかいいだしてマッチングアプリはじめるから邪魔するために架空の女を作ってお兄ちゃんとマッチングするもののなりすましを言い出せずにけっきょく破局させてしまうがお兄ちゃんが予想以上に凹んでるから恋愛レッスンを付けてあげる → なりすましがバレてキレられ、そんなにヤリたいならヤラせてあげますよで肉体関係だけはじまる → みたいなことをやってる暇があったのは銀音が体の成長とかいろいろあってスランプに陥っていたり強化選手指定を外されていたりしたからなのだが → なんやかやあって返り咲くためにお兄ちゃんといっしょにがんばって → ハッピーエンドという流れ。起承転結がくっきりしてて面白い。えっちシーン抜いたら電撃文庫とかでぜんぜんありそうなかんじだ。スポ魂部分がちゃんと面白いんですよね。ロジックとハッタリがきっちり効いてる。いや、だからといって 4L と4T は跳べないだろ……。いまがピークかもしれないから復帰戦で予定になかった四回転を飛ばせてほしいと訴える銀音ちゃんにコーチが

競技者として! アスリートの頂に手をかける者と、応援するファンのためにも……今日の結果にかかわらず、粘り強く戦うことをここに誓え!

っていうところはめちゃ熱かった。
どこがどうといわれるとまとめるのが面倒なのであれだが、文章表現そのものがかなりうまいというかんじもあった。マッチングアプリの相性を表す数値が運命度から適合度に変わったいきさつみたいなべつにあってもなくてもいいようなディテールに凝ったり、お兄ちゃんが昔銀音のためにいきあたりばったり昔話をやってたみたいないかにもありそうな昔話だったり、そういう……。お兄ちゃんがエセ不良金髪にしてる理由とかもかなりよかった。
でもなんかよく考えるとこれ義妹じゃなくて実妹でもいいような気がするな。まぁいいか……。銀音ちゃんは世界一ですね。

3/20

小川一水『天冥の標Ⅲ アウレーリア一統』(ハヤカワ文庫 JA)

宇宙戦争ってそんなアニメや漫画にするほど面白い戦いになるわけないよなというところをどうにかこうにか白兵戦をさせるためにいろいろ考えたのが偉いでしょうというお話し。なんか前読んだときはおもしろ~とおもっていたはずなのだが、いま読むと二巻みたいな地に足着いた話のほうがおもしろいな。

3/22

クラウス・リーゼンフーバー『中世哲学の射程』(平凡社ライブラリー)

村井則夫の編訳。神学にあんまり興味がなく、知性論とかの部分しかよくわからなかった。

3/23

バリントン・J. ベイリー『時間帝国の崩壊』(久保書店)

時間戦争ってそんなアニメや漫画にするほど面白い戦いになるわけないよなというところをじっさいに面白い戦いになることなく、接敵は一瞬で終わるし、戦争に勝ったなら帰ってくる自軍とすれ違うはずなので戦地(戦時?)に向かう途中で戦果がわかってしまうみたいな興ざめポイントも作ってくれる、さすがベイリーだぜ。
時間帝国で別の時間軸の血縁者と婚姻するから皇族のあいだで近親愛に忌避感がないとかそれが行き過ぎて未来のじぶんをさらってきてカップルになってるやつがいるとか未来のじぶんとカップルになったはいいもののいずれ時が来ればじぶんは過去のじぶんに連れ去られてしまうとか意味不明なディテールに凝りだすのも笑いどころ。パラドックスなんか気にしてたらベイリーはやっていけませんよ。
オールディスの時間ものとかイアン・ワトスンもそうだが、イギリス人はぜったいにアメリカ人には思いつかないキモいことばっかりしたがる。いや、アメリカ人は思いついてもこういうキモいことはやらない慎みを持ってるだけだと思うが……。
とはいえさいごのほう多次元人化したり邪教の神がラスボスで出てくると超 B 級というかんじをもはや隠しきれなくなり、まぁそういうの気にしてたらベイリーはやっていけませんからね。
しかし「やつらは大量破壊兵器を隠し持っている」で敵国に攻めていくのまんまイラク戦争だが、これはイラク戦争より前に書かれていて、ベイリーには未来を見通す政治/軍事的な卓見があった……とかではぜんぜんなく、単純にベイリーが未来にタイムスリップして未来の現実世界から小説のアイディアを得てきたのだろう。ベイリーならそれくらいする。

3/26

プロローグがとにかくひたすらダルすぎて、インストールしてからしばらく放置していたが、プロローグ終わってからはコミカルな感じになって安心した。というかプロローグみたいなかっこつけた文体はさいごまでほとんど出てこない。なんだったんだじゃああれは……。

ユルシュール
ルナ様という圧倒的な才能のまえに劣等感を抱えていた……というのが個別で出てきていいね~そういうのとなった。でもなんかルナ様のデザインってこれオシャレなのかな……まぁそこはいいか……。
ファッションショーのシーンは演出凝っててなかなか感動した。南半球を使ったトリックって……いいよね。
女装潜入もので主人公の性欲が強いとラッキースケベのたびにガチ犯罪者の気分になっちゃうからしょうがないんだけど遊星くんの性欲があまり強くなく、じゃあえっちシーンはどうなるんだよと思ったら美しさが先にきて勃たないとか言い出してワロタ。

瑞穂
男性嫌いキャラで話を面白くするのは……無理!! いや、かにしのの梓乃ルートは面白かったか……。
べつにほかに男好きの女がいっぱいいるのにべつに無理して男嫌いの人と恋愛する必要ないんだよな。男バレしてから気持ちの整理がつくまでのあいだ瑞穂が退場するのもキャラゲーとしてどういうつもりなんだよというかんじ。


素人が作ったんか? このルート……。
服飾の話もしない、小物作りはわりと上手みたいな設定も使わない、共通では三島の話してた七愛さんが三島の話しなくなる、と企画書読んでないライターに外注したんか?みたいな出来。ヤバいイジメやさんのせいで実家が倒産し、理解不能な理屈で女装をカミングアウトし、なぜか滋賀に駆け落ちする。??? でもほかのルートだと美しすぎて勃たないとかごちゃごちゃいってた遊星くんがいちばん素直に性欲出せてたので遊星くん的にはいちばん幸せなルートだったんだろうな。

ルナ
乳母の裏切りが重すぎる!! 女性同士だと勘違いして禁忌の感覚を覚えながらルナ様が徐々に朝日に堕ちていくところはかなり天才的だと思った。物語の都合でかんぜんなサイコパスと化した衣遠お兄様が暴走し始めたあたりからは半笑いというかんじ。お前服飾と才能だけにはまじめだったはずなのになんで弟をいじめるためだけに盗作とかしちゃってくれてんの? パタンナーとして才能を見せて一発逆転みたいなのもなんか理屈がよくわからない。

3/28

李太喜『自由と自己の哲学』(岩波書店)

シャレオツでいい表紙やね~と思っていたらこの表紙は著者の娘が保育園で制作した作品らしい。すごい。
著者が擁護したいのは選択―非両立論。価値ある自由の観念には「ああすることもこうすることもできた」が文字通りの意味で成り立つ必要があるし、非決定論と両立する。決定論的な世界でも行為者に源泉性が認められれば自由だよとかいってる源泉―両立論者と袂を分かつわけですな。とはいってもそういう自由が実在するかどうかについては未決着のまま残しておく。あくまで自由というものがあるとするならどういうものでなければならないかというお話。
ところで「非決定論と両立する」と書いたところでそんなにこのテーマに詳しいというわけでもないひとは「決定論とは両立しない、の誤りではないか?」と首をひねってしまうと思うが(あたしもそう)、非決定論と自由はじつはそんなに相性がよくない。
運と合理性のあいまにわれわれの自由を位置づけよう、選択可能性があるからこそ行われる真の意味で説明不能な自由な行為がかえって「自己」を作り上げているという構造が面白いんじゃないですかというなんだかモダンな感じの自由論だ。とはいってもじゃーこの「自由」にみなさんは「責任」を負えますかといわれるとむずかしいよね。

3/30

クラウス・リーゼンフーバー『存在と思惟』(講談社学術文庫)

トミスト以外はトマスのこともまぁ好きというか尊重してるのにトミストってトマス以外をちょっとなんというか「トマス以外」というくくりに入れてるとこあるよね。

3/30

小川一水『天冥の標IV 機械じかけの子息たち』(ハヤカワ文庫 JA)

ルンゼは……負けて……おりません……。読み返すと小説としてはぜんぜん結構がととのっていなくてこれはどうなんだというかんじだ。でも歌合風のシーンとかはけっこうくっきり覚えてた。

*1:AI のちからでアップコンバートしてプレイした。現代人をナメるなよ。

*2:じっさい去年にも音声作品が出たというわけで、新規供給すらある。

*3:のに恋愛アドベンチャーゲームばっかやってるんですか!? いや……恋愛アドベンチャーゲームは相手のことを知る機会から提供してくれるから楽なんですよね。

*4:ちなみにこの三か月で離縁された妻が『行人』のれいの「早く帰って来てちょうだいね」の女に投影されているとかそういう説もあるようだ。